ルの絵本〜魔女とラフレンツェ〜
鬱蒼と茂る暗色の樹々、不気味な鳥の鳴き声
ある人里離れた森にその赤ん坊は捨てられていた
幸か不幸か、人目を憚るように捨てられていたその子を拾ったのは、
王国を追われた隻眼の魔女、真紅の薔薇

銀色の髪に緋色の瞳、雪の様に白い肌
拾われた赤ん坊はいつしか、背筋が凍るほど美しい娘へと育った

「ラフレンツェや、忘れてはいけないよ」

銀色の髪を風になびかせて 祈るラフレンツェ 死者の為に
小さな唇が奏でる鎮魂歌
歌えラフレンツェ 永久に響け

「オノレラフレンツェ」悲痛な叫びの不協和音
「ニクキラフレンツェ」呪痕の炎は燃ゆる

果敢ない幻想と知りながら、生者は悲願に楽園を求める
死者もまた、帰れざる彼岸に楽園を求める

彼らを分つ流れ、深く冷たい冥府の川
乙女の流す涙は永遠に尽きることはない
ただ、嘆きの川の水かさは増すばかり…

「ラフレンツェや、忘れてはいけないよ
お前は冥府に巣食う亡者どもの手から
この世界を守る為の最後の夜の番人
純潔の結界を、破らせてはいけないよ」

「祖母が居なくなって 唇を閉ざした
吹き抜ける風、寂しさ孤独と知った
彼が訪れて 唇を開いた
嬉しくなって、誓いも忘れていった

禁断の炎、少女は恋を知った

「ラフレンツェや、忘れてはいけないよ」

愛欲に咽ぶラフレンツェ 純潔の花を散らして
愛情を知らぬラフレンツェ 漆黒の炎を抱いて

少女の中に繋がれた、冥府の底へ降りて行く

近付いてくる足音
やがてオルフェウスがエウリュディケの手を引いて
暗闇の階段を駆け上る
けれど少女は裏切りの代償として、残酷な呪いを受けた
ああ、もうすぐ、彼は振り返ってしまうだろう

魔女がラフレンツェを生んだのか?
ラフレンツェが魔女を生んだのか?
物語は頁の外側