十七番目の妹
「 。ぬらなばれけな見を画映
。にめたの妹の目番七十―――」
映画を見に行くことになったのは妹が死
んでしまったからだ。私は平素より視覚情
報には淡白を貫く主義なので、映画
を見るのは実に五年振りのこととなり、妹
が死んだのも、矢張り五年振りだった。回数
を勘定すれば、共にこれが四回目である。
映画を見るのは妹が死んだときだけと決
めているのではなく、逆であり、妹が死んだ
からこそ、映画を見るのだ。そうはいっても
しかしこうしょっちゅう死なれては私とし
ても敵わない。日頃大きな口を叩いている
友人達に合わせる顔がないというものだ。
私には合計で二十三人の妹があるけれど、
死ぬのはいつも、十七番目の妹だった。
―――「ニンギョウのタマシイ」より